2011年にインドネシアに移住して、一番初めに始めたビジネスで日本からのPKSの引合いを担当しました。
もともとPKSは、アブラヤシの実からパーム油を採取する際に出るゴミ(廃棄物)でした。
昔は、砂利の代わりに道路用に使われたり、燃やしたり、埋めたりしていましたが、昨今の環境問題への対応、脱炭素ブームによって石炭に変わる燃料として注目を集めています。
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PKSってなに?
アブラヤシの実からは、その名の通り多くの油が採れます。
主に果実の部分から油を採取しますが、種の中の「核」からも搾り取ります。
梅干しの種を割ったことがある人は、ご存じだと思いますが梅干しの種の中にも白く食べられる部分(胚または仁とも言う)がありますが、それが「核」であり、アブラヤシの実も同様に「核」を持っています。
そして、アブラヤシの実の種を割って核を取り出した後に残った種の殻をPKS(Palm Karnel Shell/パーム・カーネル・シェル)と呼びます。
アブラヤシの実は豊富な油分を有しており、PKSも発熱量が他のバイオマス燃料と比べても高いため、バイオマス燃料に適しているというわけです。
PKSの回収から出荷までの流れ
一方、パーム油工場にとって、彼らの製品はあくまでパーム油。
パーム油を生産すればするほど排出されるPKSは邪魔な廃棄物でしかありません。
よって、それらPKSを回収する回収業者が様々なパーム油工場からPKSを集めます。
昔は回収業者がPKSを「廃棄」していたわけですが、最近ではバイオマス燃料用に不純物を取り除く工程を経て出荷用に保管します。
その保管場所を当地では、ストックパイル(Stockpile)と呼びます。
不純物には、砂利やペットボトルなども含まれますが、大きな石やコンクリートの塊なども入っていることがあります。パーム油工場で、PKSは空き地に放置されているため、ショベルカーなどでトラックに荷積みする際に不純物が混入するようです。
回収から出荷までの流れをまとめるとこんな感じ。
- 複数のパーム油工場から調達
- 1か所のストックパイルに保管
- 不純物の除去
- 出荷(ばら積みやコンテナ輸送)
PKSビジネスのメリット
数あるバイオマス燃料の中でも、PKSが特に優れている点を紹介します。
1.安定的に生産
2.最高にクリーン
3.発熱量が高い
安定的に生産
アブラヤシから採れるパーム油は、以前は食用のみに生産されていました。
しかし、今では石鹸などの日用品から、ガソリンに代わる燃料まで様々な用途に使われます。
インドネシア政府は、ガソリンに代わる燃料として、パーム油のバイオディーゼルを開発・研究しています。既にインドネシアでは、バイオディーゼルが商品化され、石油由来燃料との混合燃料が販売されています。
このように、今後もパーム油の生産及び消費は拡大すると見込まれます。
そのため、副産物としてのPKSも増産され、安定的な生産が見込まれます。
最高にクリーン
PKSは、アブラヤシの実から採取できる燃料です。木や植物を伐採することなく得られ、かつ単位面積当たりの油摂取量はアブラヤシが世界一で、効率的に油を収穫できます。よって、PKSは、バイオマス燃料の中でも特に環境に優しいバイオマス燃料といえます。
アブラヤシは、アフリカ原産ですが、太陽の恵み、水の恵みに恵まれたインドネシアは、アブラヤシにとって最高の環境のようです。
発熱量が高い
前途のとおり、加工しない他のバイオマス燃料と比べると発熱量が高いです。
一般的にPKSは、4000Kcal/kgほどの発熱量となります。
これは、木質ペレットと同等。木質チップの約2倍の発熱量となります。
木質ペレットも木質チップも、「伐採」と「製造」の工程を経て製造されるものですが、前述のとおりPKSは廃棄物をそのまま利用でき、これだけの発熱量を得ることが出来る、素晴らしいバイオマス燃料です。
また、スマトラ産のPKSは殻の厚さが厚く(ドゥラという種類)、長時間燃焼します。一方、マレーシアを含むカリマンタン(ボルネオ)産のPKSは殻が薄い(テネラという種類)のが特徴です。
PKSビジネスの問題点
上記のとおり環境に優しく生産量も多いPKSですが、ビジネスをする上での問題はまだまだ多いのが現状です。
1.回収業者問題
2.ライセンス問題(環境破壊)
3.税金および徴収金問題
4.異臭問題
回収業者問題
日本でも同じですが、回収業者は裏社会の人が牛耳っていることが多いです。
インドネシアでは、プレマンと呼ばれる地元やくざや、(やくざのような)地元警察が牛耳っていることが多いです。
彼ら回収業者と直接やり取りするのは、当地のサプライヤーです。上手に回収業者との関係性を築いているサプライヤーもいますが、回収業者から出入り禁止になっているサプライヤーもいます。
サプライヤー選定は慎重にしましょう。
ちなみに、サプライヤーは石炭ビジネス出身者が多いです。
彼らは、石炭ビジネスで警察などの権力者とのコネや回収業者とのやり取り、トラックによる運搬の管理、荷積みの管理に長けています。
彼らから言わせると、「石炭とPKSビジネスは、商品が地面の下にあるか、上にあるかだけだ。」とのこと(笑)。
ライセンス問題(環境破壊)
メリットで「クリーン」と書きました。植物的にはクリーンですが、人間の間違った運用により環境破壊も起きています。
企業は(インドネシア企業だけでなく、外国企業も)森を伐採して、アブラヤシ農園を開発しました。
その中で、オラウータンをはじめ様々な動物の生息域が奪われ、また、安い賃金で子供たちが労働させられたりといった問題が出てきました。
こうした問題を改善するために「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」という国際的な認証制度が2004年に始まりました。
しかし、インドネシアでは独自のISPOという制度を2011年に開始。多くのパーム油工場はISPOを持っていますが、RSPOを持っていない工場が多いのが現状です。
そのため、RSPOが必要なバイヤーにとって、取得できるPKSは数量が限られているという問題があります。
税金および徴収金問題
PKSはパーム油に関連する商品として、輸出税と特別徴収金が課せられています。
- 輸出税:パーム原油の相場によって税率変化。トン当たり15ドル前後で推移。
- 特別徴収金:インドネシア財務省管理下のパーム農園基金が輸出課徴金制度を設け、輸出税以外の徴収金が発生。パーム原油の相場によって税率変化。トン当たり10ドル前後で推移。
よって、インドネシアからのPKS輸出時は、以下の輸出税が発生します。
「輸出税」+「パーム農園基金徴収金」
トン当たり25ドル前後の課税となります。
そのため、インドネシアのPKSは、マレーシアなどの他国よりも割高になっています。
1.農民福祉の向上
2.CPO価格の安定化
3.下流産業の強化
異臭問題
アブラヤシから採れるPKSは、いわゆる「オイル」のにおいがします。
独特なにおいの為、日本で野ざらしで保管する場合に、異臭問題が発生します。
その為、近年では、バイオマス専用コンテナでインドネシアから出荷し、日本ではコンテナを積み重ねて保管することが多いようです。
まとめ
様々な課題もあるPKSですが、バイオマス燃料として今後需要が増えることは、間違いありません。しかし、あまり情報が出回っていませんし、現地で深く調べないと知り得ない問題点もたくさんでてきます。
スーパーでお米を買うような感覚でPKSビジネスに手を出すと痛い目をみる羽目になります。
インドネシア産PKSの調達をご検討の方は、是非ご相談ください。
お問い合わせは、こちらから。
また、枝切りも葉っぱ一枚残らないくらいに、ほぼ幹だけのような状態まで切り落としますが、こちらも2,3日すれば、小さな細い枝が出てきて、数週間で青々とした葉っぱが広がります。